おパリのカフェから

パリのカフェは一つの文化だな、と思う。

日本でよくみられる、会社帰りに一杯ひっかけて・・・というバーや居酒屋とは全く違う。朝には通勤客を送り出し、昼にはここで働く肉体労働者さんなんかがよくカウンターでエスプレッソ一杯で一時間ほど休憩している。夜にはカフェは衣替えし、また別の顔となる。

カフェというよりは地域の学校とか寄り合いみたいな場所なのだろう。誰々が今日は来てないよ、ああ、あいつは買っている犬の具合が先週からどうもよくなくてな、医者に連れてったよ・・・なんてことを、名前も知らない人たちが互いに家族みたいに話し合っている。

7年もいたのだから、馴染みのカフェの一つぐらいあるだろうと思われるかもしれないが、実はそれほど多くない。カフェ代がばかにならない。立ったままのカウンター席と、テーブル席とでは値段も違う。

16区という地区が大好きで住み着いている。ロマネスクっぽい建物の感じがたまらなく愛しくて、歩いているだけで涙が出るほど幸せなのである。

といっても、別に建物と結婚するわけではないから、好きなお花屋さんや、スーパーのおじさん、パン屋のマダム、と数え上げたらキリがない。一人暮らしで黙々と作家道を極めようとしているわたしにとって、そこは簡単に言ってしまえば息抜き、そして日々の生存確認を行う家族みたいなものである。だから引っ越せない。

天気のいい日も、悪い日も、人生に疲れたらカフェに行けばいい。いつもの日常を、ちょっと違う角度から眺めてみるといい。