言の葉

日本だろうがフランスだろうが、言語の海で泳げるのは地球上で人間だけだ。言葉とは、人間に与えられた伝達手段であると同時に、強烈な武器でもある。たった一言で毎日は豊かになるし、人を殺すこともできる。

日常のささいなトラブルは、たいていが言葉のとりちがいからおこる。

だから日頃からいい言葉を使うようにしよう。美しい言葉だけを選んでていねいに使っている人は、それにふさわしい幸せ、穏やかな生活、周囲との調和がもたらされている。逆に乱暴な言葉を平気で使う人の周りは、よくないことばかりが集まって、負のエネルギーが渦巻いている。

こんにちは、ありがとう、ごめんなさい、さようなら。何気ない日々の言葉をていねいに使うだけで、人生は満たされ、豊かになる。

フランスに発つ前の日、祖母は35歳の孫娘に言った。大きな声で「行ってきます」と言いなさいと。そして当日の朝は私よりも早く起きて、プレゼントした香水を少し強すぎるほどにまとって、タクシーに乗り込むわたしを送り出してくれた。

もう帰らないよ、と言ったらそんなこと言うんじゃないよと真剣に怒られた。でもついにただいまを言うことはなかった。彼女は100まで生きるんだと言って、101歳の誕生日の数日後にほんとうに天にめされた。


わたしがうつくしい日本語を使っているかどうか、ばあばが天からいつも見ている。